宗派・地域で違う盆提灯|浄土真宗の切子灯籠・歓喜会とは?菩提寺への確認のしかた

宗派・地域で違う盆提灯|浄土真宗の切子灯籠・歓喜会とは?菩提寺への確認のしかた

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「うちの宗派って、盆提灯はどうしたらいいの?」——お盆の準備を始めると、ふとこんな疑問がわいてくる方は少なくありません。とくに「浄土真宗は盆提灯を飾らないと聞いた」という話を耳にして、戸惑われるケースをよくお見かけします。

結論を先にお伝えすると、盆提灯は多くの宗派でほとんど違いがないとされています。ただし浄土真宗だけは、お盆そのものの考え方が少し異なります。

この記事では「うちはどうすればいい?」という読者の疑問に、Q&A形式も交えながらお答えします。浄土真宗の切子灯籠(きりことうろう)や歓喜会(かんぎえ)、地域差、そして迷ったときの菩提寺への聞き方まで、ひとつずつ整理していきます。仏事はデリケートな領域ですので、できるだけ「一般には」「とされる」という丁寧な表現でご紹介します。

そもそも盆提灯に宗派の決まりはある?

まず、いちばん多いご質問にお答えします。「盆提灯の種類や飾り方は、宗派ごとに決まっているのでしょうか?」——答えは、多くの宗派では大きな決まりはない、というのが一般的な理解です。

真言宗・天台宗・浄土宗・曹洞宗・臨済宗・日蓮宗(法華宗)など、お盆にご先祖や故人をお迎えするという考え方を持つ宗派では、盆提灯の扱いに大きな差はないとされています。

お盆は一般に、ご先祖や故人が家に帰ってこられる期間と考えられています。その道しるべとして灯すのが盆提灯です。迎え火・送り火の意味を重ねた、お盆ならではの灯りといえます。この基本の意味あいは、宗派をまたいでおおむね共通しています。

ですから「○○宗だから、この提灯でなければいけない」という厳密なルールは、一般にはありません。お仏壇やお部屋の雰囲気に合うものを選んでいただいて差し支えない、とされています。種類の全体像は盆提灯の種類でも整理しています。

ただし、ここにひとつだけ大切な例外があります。それが次にご紹介する浄土真宗です。

例外:浄土真宗の考え方

「浄土真宗は、なぜ盆提灯を飾らないと言われるの?」——これは教義に関わる、もっとも丁寧に扱いたい部分です。

浄土真宗では一般に「臨終即往生(りんじゅうそくおうじょう)」という考え方をとるとされています。亡くなった方はすぐに阿弥陀如来のはたらきによって極楽浄土へ往生し、仏様になるという教えです。

この考え方からすると、「お盆にご先祖の霊が家に帰ってくる」という前提が、基本的にありません。そのため、霊をお迎えするための飾りは用いない、とされるのが一般的です。

一般に飾らないとされるもの

この教えにもとづき、浄土真宗では一般に次のようなものを飾らない(行わない)とされています。

  • 初盆(新盆)の白提灯(白紋天)
  • 霊をお迎えする意味あいの絵柄の盆提灯(地域により扱いが異なります)
  • 精霊馬(きゅうりの馬・なすの牛)
  • 盆棚・精霊棚の飾り
  • 迎え火・送り火 など

他宗派では一般的な初盆の白提灯も、浄土真宗では基本的に用いないとされています。ここが、他宗派と最も異なる点です。

お盆そのものはある——「歓喜会」

「では浄土真宗にはお盆がないの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。お盆の時期には「歓喜会(かんぎえ)」と呼ばれる法要・法話会が営まれることが多いとされています。

歓喜会は、霊を供養するための行事というより、阿弥陀仏のお救いに感謝し、仏様の教えとの出会いを喜ぶ場と位置づけられているとされます。「いのちのありがたさを味わう」機会、という説明をよく目にします。

時期は一般的なお盆と同じく、8月13〜16日ごろ(地域により7月13〜16日ごろ)とされています。「浄土真宗だからお盆に何もしない」のではなく、お仏壇を清め、お花やお供えを整えて手を合わせる——その心は他宗派と変わらない、とされています。

浄土真宗で用いる「切子灯籠」とは

「浄土真宗では灯りをいっさい使わないの?」というと、そうとも限りません。地域によっては「切子灯籠(きりことうろう/きりこどうろう)」と呼ばれる独特の灯籠を用いることがあるとされています。

とくに九州地方や、関西・四国の一部などで見られる風習とされ、地域性の強いものです。江戸時代には広まっていたとされ、当時の浮世絵などにも軒先に吊るす姿が描かれているといわれます。

切子灯籠は、立方体の角を落とした多面体の火袋に、縦長に切った紙(ひも状の切り紙飾り)を垂らした形が特徴です。お仏壇や祭壇の両側に一対で吊り下げて飾るのが一般的とされています。

角を落とした「籠目(かごめ)」のような形には邪気を払う意味が込められているとも、四隅に垂らす房は迷えるものの影響を払うとも言われています。一般的な絵柄の盆提灯とは、見た目も意味あいも異なる灯りです。

大谷派(お東)と本願寺派(お西)の意匠の違い

「うちは浄土真宗だけど、お東とお西で切子灯籠は違うの?」——これもよくいただくご質問です。同じ浄土真宗でも、派によって切子灯籠の意匠は異なるとされています。代表的な二派の一般的な傾向を表に整理します。

項目 真宗大谷派(お東) 本願寺派(お西)
上部の意匠 彫刻が施されることが多い 白一色で、花飾りが付くことが多い
色の傾向 紺と赤の染め分けが見られることが多い 上部は白を基調とする傾向
全体の印象 重厚で装飾的 清楚で控えめ
飾り方 お仏壇・祭壇の両側に一対で吊るすのが一般的

これらはあくまで一般的な傾向で、地域・寺院・仏具店によって細部はさまざまです。伝統的な切子灯籠は、手漉き和紙そのものの白・紺・赤の色味を生かしたものとされ、価格や格にも幅があります。

購入を検討される場合は、ご自身の派(お東かお西か)を確認したうえで選ばれると安心です。お東かお西か分からないときは、後述のとおり菩提寺に伺うのが確実です。

他宗派での一般的な扱い

浄土真宗以外の宗派では、盆提灯はおおむね共通の使い方をするとされています。代表的な宗派について、一般的な扱いを簡単にまとめます。

  • 曹洞宗・臨済宗(禅宗):お仏壇や盆棚の両側に提灯を一対飾るのが正式とされます。近年は住宅事情から一つだけ飾る家庭も多いとされます。
  • 浄土宗:ご先祖をお迎えする意味で盆提灯を飾る点は他宗派と同様とされます。
  • 日蓮宗(法華宗):盆提灯を飾る習わしは共通とされ、地域により形や数に差があります。
  • 真言宗・天台宗:いずれも盆提灯を飾る点は一般的とされ、特別な提灯の決まりは設けないことが多いとされます。

つまり、浄土真宗を除けば「宗派が違うから提灯を変える」という発想は、一般にはあまり必要ありません。むしろ違いが出やすいのは、宗派より地域や家庭の風習です。飾り方の基本は盆提灯の飾り方でも詳しくご紹介しています。

地域による違い

盆提灯は、宗派以上に地域や家庭の風習による差が大きいものです。「いつ飾るか」「誰が用意するか」「どんな形か」も、地域によって考え方が分かれます。

7月盆と8月盆

お盆の時期そのものが、地域で異なります。

  • 7月盆(新盆):東京など関東の一部。7月13日〜16日ごろ
  • 8月盆(旧盆・月遅れ盆):全国的に多い。8月13日〜16日ごろ

提灯を飾り始める時期も、これに合わせて変わります。月初〜10日ごろから飾り始めるのが一般的とされます。詳しい期間は盆提灯はいつからいつまで飾るでご紹介しています。

誰が用意するかの違い

提灯を用意する人にも、地域差があるとされています。

  • 関東の傾向:故人の家族が用意することが多いとされる
  • 関西の傾向:兄弟や親族で分担し、絵柄提灯を贈り合うことも多いとされる

一般に、初盆の白提灯は遺族が、絵柄提灯は親戚が贈る、という形がよく見られます。ただしこれも地域・家庭によりさまざまで、絶対の決まりではありません。

形・呼び名の地域差

提灯そのものの形にも地域色があります。前述の切子灯籠が見られる地域がある一方で、置き型の大内行灯が主流の地域、吊り型の御所提灯が中心の地域などがあります。同じ「盆提灯」でも、土地によって思い浮かべる姿が違うのです。

迷ったら:菩提寺・親族・仏具店への確認のしかた

ここまで読んで「結局、うちはどうすれば?」と感じた方も多いと思います。仏事は宗派・地域・家庭で少しずつ異なり、絶対の正解は一つではありません。迷ったときは、確認できる相手に尋ねるのが、いちばん丁寧で確実です。

菩提寺(お寺)への聞き方

もっとも確実なのは菩提寺への確認です。電話でも失礼にはあたりません。たとえば、こんな聞き方ができます。

  • このたび初盆を迎えるのですが、こちらの宗派では盆提灯はどのようにご用意すればよいでしょうか
  • 「浄土真宗とのことですが、切子灯籠は飾ったほうがよいでしょうか。飾る場合、お東・お西どちらのものになりますか
  • 「お盆のお飾りで、用意したほうがよいもの・控えたほうがよいものを教えていただけますか

「分からないので教えてください」という素直な姿勢で十分です。お寺は日々こうした相談を受けています。

親族・地域の年長者への聞き方

家や地域のやり方は、親族のほうが詳しいことも多いものです。

  • これまで、お盆の提灯はどなたが、どんなものを用意していましたか
  • 「この地域では、7月盆と8月盆のどちらで、いつ頃から飾るのが普通でしょうか

地域の仏具店への聞き方

地元の仏具店は、その土地の風習に通じています。

  • ○○(地名)で、△△宗(または浄土真宗お東/お西)の場合、どんな盆提灯が一般的ですか
  • 予算は◯◯円くらいで、初盆に向けて何を揃えればよいでしょうか

宗派・地域・予算を最初に伝えると、話が早く進みます。なごみ工房でも、宗派やお住まいに合わせたご相談を承っています。

よくある誤解

最後に、ご相談の場でよくお見かけする誤解を整理します。当てはまるものがないか、確認してみてください。

  • 「浄土真宗はお盆に何もしない」=誤解。一般には歓喜会など、お盆の時期に手を合わせる行事があるとされます。「霊を迎える飾り」をしないだけです。
  • 「切子灯籠は浄土真宗なら全国どこでも飾る」=誤解。九州など一部の地域の風習とされ、飾らない地域も多くあります。
  • 「宗派さえ合えば提灯はどれでも同じ」=やや不正確。浄土真宗ではお東・お西で切子灯籠の意匠が異なるとされ、確認が必要です。
  • 「絵柄や色に宗派ごとの厳密な決まりがある」=多くの宗派では誤解。浄土真宗を除けば、厳密な決まりは一般にないとされます。
  • 「他家でいただいた提灯は宗派が違っても必ず飾るべき」=誤解。宗派の考え方に合わない場合もあるため、迷えば菩提寺に確認するのが安心です。

よくある質問

浄土真宗ですが、いただいた絵柄の盆提灯を飾ってもよいですか?

一般には、浄土真宗では霊を迎える意味の盆提灯は飾らないとされています。ただし地域や考え方により扱いは異なります。せっかくいただいたものですので、まずは菩提寺にご相談されると安心です。

切子灯籠は必ず一対(2つ)必要ですか?

一対で吊るすのが一般的とされますが、住宅事情などから一つにする例もあるとされます。決まりに厳密にこだわるより、お住まいや地域の慣習に合わせて差し支えないとされています。

お東かお西か分からないときはどうすれば?

菩提寺に「こちらは大谷派(お東)と本願寺派(お西)のどちらでしょうか」と尋ねるのが確実です。お仏壇の本尊の脇のお軸(脇侍)や、ご本山で見分けられることもありますが、確実なのはお寺への確認です。

浄土真宗でも、お盆にお墓参りはしてよいですか?

はい、一般にお墓参りは行われます。亡き方やご先祖を偲び、阿弥陀仏のお救いに感謝して手を合わせる、という気持ちで参られることが多いとされています。

宗派が分からない場合、とりあえず何を用意すればよいですか?

宗派が不明なまま揃えるより、まず宗派を確認することをおすすめします。どうしても急ぐ場合は、絵柄の控えめな置き型行灯など汎用性の高いものが無難とされますが、後日の確認を前提にしてください。

形より、静かに手を合わせる心を

盆提灯は多くの宗派で大きな違いがなく、浄土真宗だけが考え方を異にする——これが大まかな整理です。浄土真宗では一般に盆提灯を飾らず、地域によっては切子灯籠を用い、お東・お西で意匠が異なるとされています。

とはいえ、形式そのものより大切なのは、故人を静かに偲ぶ気持ちです。迷ったときは菩提寺・親族・地域の仏具店に尋ね、ご家庭と地域のやり方に無理なく合わせていけば十分です。

提灯選びでお困りの際は、盆提灯の商品一覧もどうぞご覧ください。宗派やお住まいに合わせたご相談も承っています。

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監修者
仏事コーディネーター
川辺 一寛
京都生まれ、京都育ち、半世紀以上の歳月をこの地で過ごし、株式会社若林佛具製作所では四半世紀以上にわたって様々な業務に携わってきました。仏事コーディネーターおよび京仏マスターソムリエの資格を持っており、特に、寺院用の仏具を扱う寺院担当として、全国各地を回る貴重な経験を積んできました。そして今、『なごみ工房』の開設にあたり、これまでに学んだことを基に、様々な方々に対応し、新たな出会いを楽しみにしています。